農薬というと、体に悪い、環境を汚染する、といったあまり良くないイメージがある人もいるのではないでしょうか。
しかし、一年中安定的に野菜や果物を生産し、スーパーの棚に並べるためには、農薬は必須です。
もちろん、農作技術は日々進歩しているため、無農薬農法も可能ですが、手間暇・コストがかかり、そのコストはスーパーでの販売価格に反映されます。
無農薬農法を実行するのにも生産者・農家の高い技術が必要なのです。
一方で、適切な用法で農薬を活用すれば、生産者・農家の手間を減らすことができ、害虫などの問題を解決することができます。
途中で枯れてしまう作物も削減することができます。
また農薬は世界中で広く求められています。
特に需要が高いのが、発展途上国です。
発展途上国の農業技術は先進国ほど高くないため、無農薬農法は難しく、農薬が必要となります。
またこれから発展途上国はどんどん人口が増加し、食料も比例して必要となります。
農薬はきちんと使用方法を守ることができれば、環境にも人体にも影響はありません。
今回は農薬分野に強みを持つ総合化学メーカーである住友化学について調べてみました。
住友化学は農薬の成長性に早くから着目していたで、2002年に武田薬品工業から農薬部門を買い取っていました。
その後、リーマンショック等の苦難もありましたが、総合力を活かし、高い業績を上げている企業です。
従業員の平均給与が900万円というのも大きな特徴だと思います。
注)住友化学の有価証券報告書によると、FY2016~2018にかけて会計基準(Accounting principle)はIFRSを採用しているとのことです。
賃借対照表 BS: Balance Sheet
BSとは?
右側に「資産」
左側に「負債」と「純資産」
を並べたシートのこと。
左右それぞれの合計値が必ず同じになるのが特徴。
住友化学のBS

FY2008にはおそらくリーマンショックの影響で資産が3000億円程度減っているのが確認できます。
しかし、そこからはトータル資産は増加の一途をたどります。
FY2018には、トータル資産額が約3.0兆円以上になるまでに成長しています。
損益計算書 PL: Profit and Loss Statement
PLとは?
一定期間(3ヶ月間、1年間等)のお金の損益をまとめたもの。
1.売上総利益(粗利)
売上総利益(粗利)=売上高-売上原価
2.営業利益
営業利益=売上総利益-人件費など
3.経常利益
経常利益=営業利益+営業外損益(株など)
4.税引前当期利益
税引前当期利益=経常利益-特別損益(事業の売却など)
5.当期利益
当期利益=税引前当期利益-法人税など
住友化学のPL

FY2008, FY2009はリーマンショックの影響で売上高が減少したことがわかります。
一方、直近のFY2018は過去最高の売上高を達成しています。
経常利益以降のグラフを下に拡大しました。

FY2008ではおそらくリーマンショックの影響で当期純利益が赤字となっていますが、それ以降はすぐに持ち直し、ずっと黒字をキープしていることが確認できます。
総資本経常利益率(利回り)
総資本経常利益率(利回り)とは?
総資本経常利益率は、会社の利益効率を知る最も基本的な指標のひとつです。
自己資本と他人資本を足し合わせた総資本をベースに、会社がどの程度の利益を出したかを計算したのが、総資本経常利益率。
つまり、会社の利回りと言い換えてもいいでしょう。
利回りのいい会社のほうが、銀行にも投資家にも従業員にとってもプラスになります。
経営者はこの総資本経常利益率を上げることが重要な仕事です。
利回り(%)=経常利益÷総資本(自己資本+他人資本)×100
*BSとPLから算出
住友化学の総資本経常利益率(利回り)

FY2008はリーマンショックの影響で、総資本経常利益率はマイナス。
一方でFY2017では総資本経常利益率8.0%に到達する勢いがありました。
FY2018で総資本経常利益率が約2%落ち込んでいるのが気になる点です。
流動比率
流動比率とは?
流動比率とは、短期の安全性を表す指標のひとつ。
流動比率が大きいほど、短期の安全性が高い(資金がショートしにくい)。
流動比率100%以下だと資金繰りに苦労をしている印象。
流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
*BSから算出
住友化学の流動比率

短期の安全性は10年以上に渡って120%付近で大きな変化なく、安定している。
自己資本比率
自己資本比率とは?
自己資本比率とは、長期の安全性を示す指標のひとつ。
自己資本比率が高いほど、長期の安全性が高い。
一つの指標は30%以上であること。
自己資本比率(%)=自己資本(純資産)÷総資本×100
*BSから算出
*自己資本:返さなくていいお金
住友化学の自己資本比率

10年以上に渡って自己資本比率30%以上で大きな変化なく、長期の安全性は安定している。
売上高対総利益率
売上高対総利益率とは?
売上高対総利益率とは、収益性を表す指標のひとつ。
売上高総利益率が高いほど、売上原価がかかってない効率的な経営といえる。
売上高総利益率(%)=売上総利益÷売上高×100
*PLから算出
売上高対営業利益率
売上高対営業利益率とは?
売上高対営業利益率とは、収益性を表す指標のひとつ。
売上高営業利益率が高いほど、人件費等がかかってない効率的な経営といえる。
流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
*BSから算出
売上高対経常利益率
売上高対経常利益率とは?
売上高対経常利益率とは、収益性を表す指標のひとつ。
売上高対経常利益率が高いほど、本業以外の稼ぎがあり、良好な経営の助けとなる。
売上高経常利益率(%)=経常利益÷売上高×100
*PLから算出
住友化学の各種利益率まとめ

従業員数の推移

リーマンショックの影響のためかFY2008→FY2009で200人ほど従業員数が減少。
ここで少ない従業員でも回せる仕組みづくりが徹底されたと考えられる。
直近のFY2018では少しずつ従業員数が回復基調。
注)連結会社を含めた従業員数ではなく、あくまで住友化学での従業員数である。
労働分配率
労働分配率とは?
生産性を表す指標のひとつ。
粗利に占める人件費の割合なので労働分配率が低いほど、人件費に回せるお金がある。
すなわち、給料が上がる見込みが大きい、ということ。
労働分配率(%)=人件費÷売上総利益(粗利)×100
*PLから算出
住友化学の労働分配率

リーマンショックの影響で、FY2008の労働分配率は100%に到達。
これは断腸の思いだったはずです。
FY2018は労働分配率が75%程度で少し余裕があることがわかります。
従業員あたりの売上総利益
従業員あたりの売上総利益とは?
従業員あたりの粗利とは、生産性を表す指標のひとつ。
この値が高いほど従業員ひとりひとりの付加価値が高いことを意味する。
従業員ひとりあたりの粗利(円)=売上総利益(粗利)÷従業員数
*PLから算出
住友化学の従業員あたりの売上総利益

一人あたりの売上総利益は、増加の一途をたどっています。
FY2018は10年前のFY2008と比べ、約2倍の生産性を達成していると言えるでしょう。
従業員の平均年収

従業員の平均年収はFY2018で900万円超え。
従業員にとっては、非常に魅力的な数字かと思います。
経営陣と労働組合と日頃の従業員の方々の努力の賜物だと思います。
引用元:
住友化学株式会社 有価証券報告書・四半期報告書